ケースプレゼンテーション

 

自治医科大学 感染症科で使用しているケースプレゼンテーション形式

 

みなさん、こんにちは。

臨床医学の入り口は、患者の状態をいかに正確に把握し、それを、他の医療従事者に伝えることができるか、ということです。

伝え方は、口頭(Oral case presentation)カルテ記載(Charting)に分かれています。

両方がバランスよくできるようになることが重要です。カルテ記載は、その患者の公式な医療記録であり、「担当医の覚え書きやメモ」ではなく、別の医療従事者とその患者の医療情報を共有するための強力なツールです。したがって、詳細かつ必要十分なカルテ記載(Charting)は、質の高い医療を提供していることの指標となりうるのです。

 

1.Full consultation presentation 公式コンサルテーションフォーマット

通常は、10分程度で、下記の順番に、体系的に、流暢に、口頭で言っていただいています。

・コンサルト理由

・年齢、人種、性別

・重要な関連既往歴

・いつ入院したのか(何日前に)入院理由を述べる

・入院時のWorking diagnosis と経過

・コンサルトにいたった理由
感染症科的なHPI (history of present illness):特に鑑別診断を想定したうえで、”Pertinent positives and negatives”を含むこと。

Review of systems
各臓器ごとに、主訴やコンサルト理由に直接関係がなくても、なんらかの症状や疾患が隠れていないか、患者から問題を引き出してあげる目的で行う。

・“From Head to Toe” 文字どおり、頭の先から、つめの先まで、系統的に症状がないかを聞いて、記録する(これは、次の身体所見Physical findings とは別です)。

より詳細の

・内科既往歴

・外科既往歴

・社会歴
Smoking (Active vs. ex-smoker)、お酒、IVDA(薬物中毒、 Intravenous drug abuse)、結婚ステータス、家族、職業、出身地、旅行歴、ペットの有無、sexual history (プライベートな場所で取ること!)、HIVのriskの有無

・家族歴:pertinent (関連した重要な)もの

・Allergies

・コンサルト時のmedications、 必要に応じ入院時のmedications

Physical examinations
Vital signs (BP, HR, RR, Tmax (過去24時間の最高体温), Tc(現在の体温))から始まる。日本の医療現場では、呼吸数がほとんどの場合、記載されておらず、バイタルサインとして不適切。当科のプレゼンテーションで、
「呼吸数がない」ものは、NOT ACCEPTABLE!
呼吸数の数え方をしらない学生、研修医がほとんど!
コンサルト時に、「呼吸数は自分で数えること」を原則にしています。

また、ICU、Critical careの患者のバイタルサインは、24時間モニターされているので、24時間の間のRange(幅)を記載。
例:血圧、収縮期は120-150、 拡張期は60-70で、昇圧剤はDopamine 7 mg/ml/kg を使用中など。
脈も、120-130
呼吸数は、挿管されており、SIMV で、Tidal volume 400 ml、 RR 15/min、Fi02 は0.5、PEEP 8 など。このときのABG (血ガス)は、pH, PCO2, PO2, O2Sat
体温は、上記。Tmax, Tc片方または、ともに記載、言及。

General appearance
:ここの一行で、意識状態、見当識、重症度が一目瞭然であること!!頭頚部から四肢まで、系統的に、フォーカスしたもの。

検 査
提示する順番は、安価で、侵襲性が低く、優先順位の高い検査から、論理的に提示。
CBC with diff、 PLT:全血と分画、血小板 
Chem7:基本電解質Na、 K、 Cl、 HCO3(可能なら)、腎機能 BUN、Cr
LFT’s :肝機能
CPK, CPK with MB (CPKは、適応があれば。MB分画がないと役に立たない!)
Troponin I、 T (適応があれば)
PT/PTT:凝固検査)
UA、UCx:尿検査、グラム染色、尿培養
BCxs:血液培養 2セット
Other Cxs: 他の検体のグラム染色、培養
Imaging studies:画像評価
画像は、Chest X-ray、KUB、Ultrasounds などが先。
CT、MRIは、最後になる。その場合、どの場所のCT(MRI)で、造影剤入りかどうかは明言、明記する。

Case summary
自分の、このケースのまとめ(臨床能力が直接反映される部分)。
これまでの情報を、1パラグラフ程度にまとめる。
年齢、性別、重要関連既往歴、HPIのサマリ。

アセスメント
感染症科的鑑別診断:
まず、疾患名(例:病院肺炎、尿路感染など)
複数ある場合は、「優先順位の高いものから列記」
そして、それぞれの微生物学的な鑑別診断

例:尿路カテーテルによる尿路感染
原因微生物は、グラム陽性菌では、腸球菌(VSE, VRE)、 グラム陰性菌では、E. coli、 Klebsiella、 Proteus、 “SPACE”に代表される菌 (Serratia、 Pseudomonas、 Acinetobacter、 Citrobacter、 Enterobacter)。

プラン
箇条書きが望ましい。

抗菌薬名は、略号は使用禁止。相手が誤解し二度手間になる情報還元方法は、不適切! 一般名フルネームまたは、商品名を書くこと。

抗菌薬フルネーム 1回投与量、投与ルート、投与頻度 (1日総量)
例:Ceftriaxone2 g IV 12時間ごと(1日総量4 g)

 

2.Chart round 時のBrief presentation (One paragraph presentation)

年齢、性別、重要関連既往歴、感染症科的診断(左右の場所、解剖学的な位置を明確に含む診断名)および微生物名と主要な感受性結果、現在の治療(抗菌薬名、投与法、Day何日目か)、今後のプラン。

 

3.病棟などでの”One sentence” presentation

2をよりシンプルにしたもの。
年齢、性別から始まらないpresentationは、NOT ACCEPTABLE!

例:50歳女性。MRSAによる右ひざ人工関節関節炎、Vancomycin 750 mg IV Q12でDay 12. 現時点での状態:発熱なく、ひざの痛みなく、安定して治療中など。再オペは、30日後に予定。

(ご質問、お問い合わせは、本ホームページまで。)

 

 

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