もっともっと禁煙を!(2007.5.7)

 

タバコの煙には、数千におよぶ有害物質が含まれており、やっかいなことにそのなかの一つの「ニコチン」により、「依存症」になってしまうのです。だから、なかなかやめられないのです。「喫煙者はニコチン依存症=病気」なのです。

在米時代に、日本に帰国した際にもっともいやだったことの一つは、街にスモーカー(喫煙者)があふれていることでした。1995年に渡米してから、Smoking 喫煙の健康被害については、徹底的に教育されました。医療従事者として、一般人として、Smokingの健康被害は、米国ではかなり教育・浸透されています。高学歴者での喫煙率はきわめて低く、10%以下程度であると思います。事実、私がパブリックヘルスの大学院に入学したときに、同級生に対して、喫煙のアンケートがありましたが、医療従事者の集団ではありますが、数%でした。人前での喫煙は、「常識として」行われません。つまり、「人前では禁煙が常識」ですし、健康被害を起こす煙を他人に撒き散らすことは、長期的、間接的に「他人の健康を害する」ひいては「殺人行為」とも取れる、との見方が主流です。

米国では、1960年代に、喫煙と肺がんの関係が明らかにされました。それ以後、特に1980年代ごろには、米国で死因の第1位を占めている心臓血管系の疾患、脳血管系の疾患、各種のがんのリスクファクターとして認識されてきた喫煙は、米国の国家政策として制限・禁止する方向になっています。「空気を共有する空間」「公共の空間」では、基本的にすべて「禁煙が常識」です。飛行機、公共の交通機関、ホテルのロビー、病院、そのほか公共の建物内はすべて禁煙。レストラン、ホテルの客室などは、「完全分煙」ですし、煙が禁煙席に舞い込んでくることはありません。最近では、イギリスでも、パブ(お酒を飲む場所)も禁煙になりました。

一方、日本では、やっと健康増進法が施行され、法的に「分煙」となりました。それでも「人前で平気で喫煙」している人が大半です。居酒屋やレストランでも、「形だけの分煙」で、「煙を共有」している状況が多いです。私は喫煙者がいるところには入りたくないですね。東北新幹線は、完全に禁煙車になりました。名古屋のタクシーも禁煙車が登場しました。すこしずつですが、日本でも禁煙が進んできてはいます。

それでも、日本では、もっともっと「喫煙者がマナーを守ってほしい」のです。他人に煙を撒き散らさないでほしいのです。レストラン、居酒屋でも、「他人の迷惑、健康被害、殺人行為」であることを認識していただきたいのです。地下鉄サリン事件は、まだ記憶に新しいと思います。サリンという毒ガスは、「一瞬にして人を殺害」します。タバコという毒ガスは、「長期的かつ間接的に殺害」します。

タバコは、確実に健康を害するのです。日本は、先進国で、もっとも医療費にお金をかけていません(日本は国民総生産GDP7%程度、欧米先進国は米国の15%を筆頭に日本よりもお金をかけています)。日本では、タバコは先進国では最低値の一箱200-300円で、だれでもアクセスのできる「自動販売機」などでタバコ販売をしています。日本は、タバコに関し、国民全体がもっと「目を覚ます!」ことが必要です。欧米では、タバコは一箱1000円近くします。税金をかけて購買を制限しています。米国では、タバコもアルコールも、生年月日が明確になるID バッチ(運転免許など)がないと購入できません。タバコやアルコールの「自動販売機」はありません。

「国民の健康を守る」「他人の健康を守る」「自分の健康を守る」ために、日本がしなければならないことの一つは、「もっともっと禁煙政策を徹底化する」ことだと思います。喫煙は、健康にとって最大かつ最悪のリスクファクターの一つ です。しかも修正可能なリスクファクターだからです! ですから、一人ひとりが、「人前での禁煙を常識」として認識し、医療従事者である私たちは、医療従事者同士での禁煙の促進、患者教育、ニコチンパッチの普及などに努める必要があると思います。個人的には、欧米の政策に習い、タバコ一箱を1000円程度になるように税金をかけ、その税金を国家の医療費に回すことがもっとも公平な資源分配のように思います。

 

もっと禁煙

 

 

 

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